蒼い月




Novelに戻る   
>>Next





第一話 未来を背負う


※この物語はフィクションです。



いつまでも退屈な同じ日々が続くと思っていた

馬鹿みたいに明日も友達と一緒に笑っているはずだった

あの日を境に―――この国から笑顔が消えた



京輔「聞いたか!?何か戦争始まるらしーぞ!?」

弘樹「はぁ!?マジかよ?」



この国が戦争を始めた



弘樹「何でそんな事起きるんだよ!?」

京輔「知らねーよっ!んなのこっちが聞きてーくらいだっつーの。」



理由は単純明快

ある強大な軍事力を持った国が侵攻してきたから

本当はもっと複雑な理由があるけど根本の目的は侵略だ



弘樹「ちょっと俺コンビニで新聞買ってくるわ。」

京輔「あ、後で俺にも見せて。ついでにお茶買ってきてくれよ。」

弘樹「てめーで買いに行け。」



最初は同盟国が応戦してくれた

けれどその同盟国も同じように侵攻を受けた

同盟国も手が回らなくなり次第にこの国を守ってくれなくなった



京輔「まさか新聞買う前に号外受け取れるなんてな。」

弘樹「どれどれ・・・うわ、マジだ。ほら一面ぜーんぶ開戦の二文字。」

京輔「マジでありえねぇ・・・茶ぁ吹きそうになったぞ・・・。」



この国は自衛を迫られた

誰も助けてくれないなら自分達が立ち上がるしかない

いや、立ち上がらざるを得なかった


―――開戦から一年

自衛隊では数も戦力も足りない為、ついに民間人も兵士として徴兵された

むしろ一年も自衛隊・警察だけでよく持ってくれていたとも思う

敵国がこちらの国を軽視していた為か、複数の国と戦争していたから戦力が分散されていたのだろう

痺れを切らして戦争の長期化に終止符を打つべく、敵国がこちらに大量の軍事力を投入してきたのだ

しかしその拮抗した一年の間に、こちらは民間企業と国が提携して大量の武器を造っていた

敵国軍事力投入も自衛隊戦力不足も全ては想定の範囲内だったのだ

軍事技術だけは敵国にも劣らず、かなりの高性能な武器が兵士に支給された

平和に馴染みすぎた国民がそれを扱えるのかはまた別の問題なのだけれども

しかし、一般人を訓練するにも時間も人手も足りない

簡単な講習と実演練習、そして用具の使い方を説明だけで実戦に投入されるのだった

実戦に投入されるのは健康な二十歳以上の男女

戦闘に参加できない者や重要な職務を持った人は徴兵を免れた

けれど一般的な就職前の学生や会社員は有無を言わさず徴兵されていった



弘樹「ついにこの日が来ちまったなー・・・。」

京輔「だなぁ、まさか俺らまで戦闘の最前線に立たされるなんてなぁ。」

弘樹「えっと、俺が第24歩兵部隊でルートはE、公園前で待機か。」

京輔「俺は・・・何処だったっけ。あ、ルートCの33部隊で公共団地前で応戦か。」

弘樹「いいよなー建物があって。いざとなったら隠れ易そうだし。」

京輔「ばーか、建物ごと破壊されたら終わりだっての。」

弘樹「公園なんて隠れられると思うか?」

京輔「お前だって昔公園でかくれんぼくらいやっただろ?」

弘樹「規模がちげーよ。」

京輔「・・・おっと、時間だな。お互い幸運を祈るっ。」

弘樹「俺達さ・・・死ぬ・・・かもしれないんだよな・・・。」

京輔「ま、殺るか殺られるかだしな。せいぜい逃げ回って生き残れよ?」

弘樹「てめーも死ぬなよ?今じゃ葬式なんてできねーんだからな?」

京輔「アホかっ、彼女居ない歴20年のまま死ねるかってんだっ!」

弘樹「はははっ!京輔は死にそうにねーな。」

京輔「んじゃ、頑張れよっ!」

弘樹「ああ、また会おうな!」


京輔と別れ、軍支給のヘルメットと防弾チョッキを身につける。

チョッキをつけていても首から上を撃たれれば間違いなく死ぬ。

それに敵の攻撃は銃だけとも限らない。

重火器や爆撃の可能性だってあるのだから。

これらを身につけるとあらためてこれから死地に向かうのだと再認識される。

靴底の厚い靴に履き替えると集合場所へと走っていった。


隊長「作戦の確認をする。よーく聞けっ!」

兵士「はいっ!!」

隊長「住民は全員避難させた。動く者に細心の注意を払え!敵兵を発見したら容赦なく攻撃しろ!だが間違っても味方の服の色は絶対に撃つな!やらなければやられると思え!怪我をした味方は安全になってから本部まで運ぶように!間違っても交戦中に運ぼうと思うなよ!運ぼうものならお前もろとも撃ち殺されると思え!終わりは本部から無線とサイレンで合図をする、ここへ戻るまでは一切気を抜かないことだ!以上、分かったな!?」

兵士「はいっ!!」

隊長「よし!健闘を祈る!絶対に死ぬんじゃあないぞ!」


こうして全員が配置場所へと向かっていった。


俺の名前は『松宮 弘樹』、ごく普通の専門学校の生徒で既に就職の内定も決まっていた。

なのに徴兵義務によって就職先そのものが徴兵で経営不可能になり、俺も徴兵されてしまった。

フツーに学校を出て、フツーに就職し、フツーに結婚して家庭を築くつもりだったのに。

明日生きられるかもわからない戦場に赴く立場で生きる事になるとは。

さっき話していた『岡本 京輔』は小学校からの親友で高校までずっと同じ学校だった。

京輔は俺と違って頭も良くて大学に入ったが・・・まぁ結果的に俺と同じ兵士になっちまったがな。

給与は国から毎日振り込まれ、殉職した場合は以後10年分の兵役の給与が慰謝料として家族の元に入る。

それでも税金やらで1000万程度にしかならない、俺の命はこの程度だっていうのか?

・・・でも軍事資金で更に財政が圧迫され、死者も毎日のように出てるから仕方が無いといえばその通りなのだが。

ま、そのお金が振り込まれればちょっとくらいは親孝行になるだろうか?

いや、俺が死んじまったら元も子もないか。


弘樹「(・・・他の兵士が歩く足音しか聞こえねー・・・。本当に敵が居るのか?)」


兵士達は一定間隔を保ちながらゆっくりと銃を構えて進む。

銃がとても重く感じる・・・照準を合わせようにも腕がガクガクと震えている。

スナイパーのように一撃で相手を仕留めるなんて不可能だと思う。

常に疑心暗鬼で味方すら撃ってしまいそうな雰囲気。

異常な緊張で腹も痛くなくなった。むしろ吐気がするくらいだ。

こんな精神状態では冷静に敵に一発だけ発砲なんてできるわけがない。

たった数百メートルの距離の公園が異様に遠く感じた。

公園には既に数人の兵士が遊具の傍で銃を構えている。

まるでゴーストタウンのように静まり返った公園。

死を賭したかくれんぼでもしているかのような錯覚に捉われてしまう。

今のところ・・・特に異常も動きも無い。

周囲の兵士もキョロキョロと見回しているだけで誰一人交戦していない。

確かに敵がこの公園を通らない可能性もある。

他の兵士の話によると何事もなく帰れる日だってあるのだ。

けれど万が一、そこに敵兵が現れると想像を絶する光景が待ち構えているらしい。

恐怖と興奮に震えながら敵が現れるのをじっと待つ。


・・・


一時間が経過したが依然として動きも無い。

だいぶ震えも収まって冷静になってきた。

隣の兵士に手で合図を送る余裕さえ出てくる。

見知らぬ人だけどこんな状況下では妙な仲間意識が芽生えるものだ。

できれば自分の周囲の人には生きて戻って貰いたいと切に願う。


ターン・・・・タタタタタ・・・・


一瞬にしてその場の居た者達に緊張が走る。

銃声だ。

音から察すると距離はここからかなり遠いようだが、逆に言えば敵が来た証拠でもある。

身体の震えが再度始まる・・・ぎゅっと銃を握るがちっとも落ち着かない。

昔にゾンビを撃ち殺すゲームをやったが、もう二度とそのゲームで遊べる気がしない。

銃を手にした瞬間、この記憶が鮮明に蘇ってしまうだろうから。

と、腰につけた無線に隊長から連絡が入る。


隊長「ルートC方面で第33・34部隊が敵兵と遭遇、戦端が開いた!ルートEにも敵兵が来る恐れがある、一瞬たりとも気を抜かぬように!以上、健闘を祈る!」


了解、と返したいところだが戦闘中は無闇に言葉を発するわけにはいかない。

それに今の連絡は全隊連絡であって返事の必要も無いからだ。

いよいよ、自分の中で戦争が始まったという気がした。


>>Next

Novelに戻る
本・漫画・DVD・アニメ・家電・ゲーム | さまざまな報酬パターン | 共有エディタOverleaf
業界NO1のライブチャット | ライブチャット「BBchatTV」  無料お試し期間中で今だけお得に!
35000人以上の女性とライブチャット[BBchatTV] | 最新ニュース | Web検索 | ドメイン | 無料HPスペース